SAS University Edition 導入の背景

先日、大学職員の方との何気ない会話で、SAS University Edition は、山形大学でSAS Visual Analytics を使っているので、それを導入する前提だ、という話が解りました。
ネットで検索すると、山形大学関係の記事が幾つもあります。

代表的な記事はこれでしょう。

国立大学法人 山形大学 実践的に効果あるエンロールメント・マネジメントの実現に向け、「SAS®

Visual Analytics」を活用
国立大学法人 山形大学
実践的に効果あるエンロールメント・マネジメントの実現に向け、「SAS® Visual Analytics」を活用

今、山形大学は、MBAを持っているマーケティング専門の教授をスタッフに招いて多くの学生に受験してもらい、しかも、退学や停学させずに卒業してもらうにはどうすればいいか、という課題に向けて積極的に活動しています。その活動の一環で、SAS Visual Analytics を導入して効果をあげているようです。

1. そもそもなんで...

山形大学

実は、山形大学は 2001年に入試試験の計算間違いが判明し、それ以降、学生支援の考え方がスタッフに定着していました。また、地方の国立大学で受験者数の減少が問題となっていました。そういう素地があって、アメリカで生まれたエンロールマネジメント(EM: 大学における学生支援の取り組み)とインスティテューショナル・リサーチ(IR: 大学自体を調査・分析することで、大学の意思決定を支援する取り組み)に積極的でした。

2006年にEMの専任教職員などを置く組織を設置し、2007年にキーマンととなる福島教授をスタッフとして向かえて本格的に活動を始めました。福島教授は、留学経験がありMBAも取得している、大学マネージメント・大学マーケティングの専門家です。そして、この組織は今ではエンロールマネジメント部に昇格し、山形大学の中核的な存在となっています。
(キーマンだった福島教授は、2016/4 から大正大学に移られました)

そして、2010年には総合的学生情報データ分析システムの構築に着手しました。こうして得られたデータは、Microsoft SQL Server を中心としたシステムに蓄えられ、SharePoint を使って表示するようにしていましたが、より、職員が手軽に使える仕組みとして 2013年から SAS Visual Analytics の導入に着手し、今は効果を挙げているそうです。

2. なぜ、SAS だったか

SAS Visual Analytics を導入して成功している会社には、小売業や製造業もあり、マーケティングの考え方と非常に相性のいいソフトのようです。また、雛形にちょっと手を加えれば、全く新しいデータを加えて、それを使った解析も可能です。ユーザー次第で常に新しい試みができるようです。

一方、Microsoft 製品は、Microsoft SQL Server にしてもそうなのですが、アプリケーションの裏側にあって活躍するミドルウェアで、表側のアプリケーションはソフト会社が作成するのが一般的だという印象があります。定型業務には能力を発揮しますが、新しいことに対応したり、細かい仕様変更には対応できないのでしょう。山形大学で SAS Visual Analytics を導入した経緯を読んだ記事にもそういった記載がありました。Microsoft の組み合わせでは、システムエンジニアに依頼しないと新しい分析ができないそうです。

sas institute japan

3. SAS でよかったの?

ただし、SAS Visual Analytics は、かなり敷居が高いソフトだと思っています。きっと導入当初は、コンサルタントがエンロールマネジメント部の職員といっしょになり、いろいろな雛形を準備したり、操作指導を行ったのだと思います。

実際ネットで調べたところ、ビッグデータの解析に関して、三菱総研DSCが講師の派遣やデータ解析を行う契約を結んだというニュースがヒットしてました。この会社は、都市銀行系の電算部門が独立したIT企業で、アウトソースで給与計算を行うサービスなどを行っています。ビッグデータの活用についても、いろいろなノウハウを持っているようです。

そして何よりも、トップが積極的にこの仕組みの導入を支持し、これに関わるスタッフ全員が理解して、キーマンがうまく導いたことから導入の成功例として、記事にもなっているのでしょう。

記事にはトップの話しか載らないので、実際にデータ収集に当たったり、データ提供に関して関係者と交渉したり、集めたデータの集計の仕方を学んだ関係者の話には興味があります。

私は、新しいシステムの導入や、システムの移行などを幾つか経験してきました。そこでつきまとうのがデータの移行です。新しいシステム導入でも、こういうデータがあるから使える、を前提に話が進みます。しかし、新しいシステムに合うデータだったことは1度もありません。スクリプトを組んでフォーマットを変えて読めた、というのはいい方で、エラーになるデータを手で直すこともよくありました。また、従来の仕組みでは無かったデータが必要になる、というのもよくあります。新しいシステムをゼロから学んで、その仕組みと従来のデータに合う情報を作ってあげる必要があります。

きっと、コンサルタントとデータ収集を担当する人たちが、長い時間協議してやっと使えるレベルになったのいうのが実際では、と思ってしまいます。

4. で私は…

今、私が細々とやっている SAS University Edition ですが、実は導入理由もキーマンが誰かも解らずはじめました。この先どうなるか、かなり心配です。

Red Hat で動く Microsoft SQL Server

最近の Microsoft は、オープンソースソフトに対する姿勢が様変わりしてます。特に、Windows の基盤ともいえるような .NET をオープンソースにしたのは、正直、かなり驚きました。

以前は、Linux を目の仇にしてて、よくWindows Server と比較する発表とかも出てたと記憶しています。

そんな Microsoft が、Linux の代表ともえる Red Hat のイベントで、Linux 版の Microsoft SQL Serever をデモしたというニュースをネットで見ました。なんでも、コマンドラインから、yum でインストールして service コマンドで実行したり、クライアントの Mac Book で Chrome で動作をアピールしたとか。

そして極め付きは、サービス名が mssql-server で、最近オープンソース界とあつれきのあるオラクルの mysql-server にそっくりなのだとか。

Red Hat Summit 2016にMicrosoftが登壇、SQL Serverをデモ
http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/event/1009213.html

時代が変わったということでしょうね。
Microsoft が Windows Server と Linux の比較をやっていたころ、オープンソースの多くは Sun Microsystem のSolaris 上で開発されていました。私は、Red Hat よりも Sun Microsystem の貢献度が大きいと思っています。その Sun Microsystem を買収したのが、オープンソースに否定的な Oracle とは。プレイヤーが入れ替わったことを実感する年になったような気がします。

なお、今オープンソースを支えている最大の企業は、AWSを展開するアマゾンらしいし。アマゾンって、昔はネットにできた本屋さんだったのに、今は世界的なIT企業。